
週末、メキシコシティからGuanajuatoへ。5時間のバス移動でメキシコの低密地帯を通り過ぎる。緩やかにうねる地表は雨季のおかげで黄緑色に覆われ、まばらな木立が地平線上に並んでいる。黄緑色はときどき背が高くなると、それはトウモロコシ畑であり、木立が整然と並ぶと、それは畑の防風林である。既存の自然のランドスケープと人の手が加えられた畑地とは、寸法とレイアウトが違う以外はほとんど同じ。見過ごしてしまいそうなくらいの微差。地面に定着するRCフレームレンガ壁の建物も、土と同じ材料なので、地表が少し顔を出したようである。
Guanajatoへつくなり、まさに文字通り、雨季の洗礼を受ける。Guanajuatoは谷筋の目抜き通りを中心に発展しているので、大雨は山肌を洗って中心地を水没させてしまう。そのために地下に排水路としてトンネルが張り巡らされて。今では自動車道路として利用され、地上はほとんど歩行者のために解放されているのだが、このときばかりはしっかり排水路と化している。いまだに機能を保つ山間の二層都市。
蛇行する坂道の目抜き通りにはコロニアルの建物がひしめいている。そのうちの一軒が焼鳥屋に入る。店先で回転するチキンは総勢50羽余。直火で豪快に炙られながら脂を落としている。
谷筋から少し上がると住宅街。鮮やかな色の箱と街路が密実にからみあいながら等高線を横切って上がっていく。地形と直方体による驚異的なパースペクティブ。車の立ち入らない街路はシティに比べて断然安全で、子供も道で遊ぶ。世界遺産に登録されてからも拡張されているという外延は作りかけの住宅が多く、まだ塗り込められていない煉瓦の赤茶色が目立つ。
目抜き通りから上がった道を歩いているとTaller(アトリエ)を見つけたので声をかけてみる。日本語で返事をされたので驚いていると、住んでいるのは日本人とメキシコ人の夫妻。Mojigangaという、紙でできたねぶたのような人形を作っている。ペントハウスから入り階段を下りると街を一望できるTaller。さらに降りるともうひとつのTaller。さらに階下にはまだ階段の繋がっていない倉庫がある。急峻な斜面にコンクリートと煉瓦でできた箱が食込んでいる。
Guanajuatoのほとんどの住宅は斜面に建っているので、細長いすり鉢状の都市を一望できる。自分たちと同様の住宅が反復して今眺めている都市をつくり、眺めている都市を良く見ると自分たちと同様の住宅が見える、再帰的な状況。全体を形成する部分である感覚。私と都市との一体感がある。